イスラエルでは一日中汗だくだった夏に別れを告げて、朝晩に涼しい風が横切る過ごしやすい秋を迎えている。
秋といえば、渡り鳥の季節でもある。イスラエル北部の渓谷や湿地、高原地帯には、今後数カ月で、約2億5000万羽の渡り鳥が飛来すると予想されている。通常であれば、この時期多くのイスラエル人が北部を訪れ、自然の中でバードウオッチングを楽しむ。
ウクライナでは、戦争が鳥に与える影響についての報告があると聞くが、イスラエルに関しては違うようだ。現在、数千羽のコウノトリ、ハチクマ、ヨーロッパキジバトがイスラエル中を移動しているのが見られる。専門家の話では、戦時中でもイスラエルを中継地とする渡り鳥に関しては大きな変化は見られないという。
ただ、レバノン南部へのイスラエル軍による先制攻撃の際には、午前6時に猛禽類(もうきんるい)の飛び立つ姿が目撃されたそうだ。タカのような猛禽類は通常暖かい時間帯を待って移動するが、早朝の激しい爆撃音によって通常よりも早く飛び立った可能性が高いという。
同じ渡り鳥でも、小さなヒバリやシギ科の鳥は夜間に移動する。鳥には、戦争が危険だという概念がなく、本能と地理的な要因でひたすら目的地に向かって飛ぶ。
下を見ず、ただ前だけを見て進むという渡り鳥。終わりの見えない戦争のただ中にいるわれわれ人間から見ると、周りで何が起ころうと目的地だけを見据えて飛んでいく渡り鳥たちがうらやましく感じられる。(M)