【上昇気流】路線バスの「小さな旅」

都営バス

図書館に行こうと久しぶりに休日の路線バスに乗った。いつもは通勤に使っているから景色は変わらない。ところが、お客さんの顔が全く違っている。そこが妙に新鮮だった。

普段は見過ごす住宅街の停留所で、3歳ほどの坊やと父母らしき3人連れが乗ってきた。坊やはニコニコ顔だ。横向きの長椅子に川の字に座ると「パパ、バスに乗ったよ。ママ、バスに乗ったよ」と左右に顔を向け何度も話す。そのたびに「うん、バスに乗ったね」と父母は応じている。

親子連れは早くも二つ目の停留所で降りた。どうやら初乗り体験らしい。坊やは「バス、バイバイ」と盛んに手を振っている。それに応えて運転手が白手袋の手を振った。何だか「となりのトトロ」のネコバスに乗った気分がした。

このまま余韻に浸ろう。手元にあるのはフリー切符だ。幸いにも時間はたっぷりある。路線バスは循環しており目的地の図書館を何度も通る。もちろん冷房が利いている。さてはて、今度はどんなお客さんが乗ってくるだろうか。想像もしなかった休日の“小さな旅”に夢が広がった。

飛行機の旅であれば、もっと大きな夢を乗せていたことだろう。その日、4機の航空機には246人が乗っていた。その命が一瞬にして奪われた。地上では2727人。親を亡くした子供がいれば、子供を亡くした親もいる。

惨劇は二度と許さない。きょう9月11日、米同時多発テロ事件の犠牲者に想(おも)いを馳(は)せたい。

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