パリでのパラリンピック開催で、地下鉄の8割で車椅子での移動に問題があることが露呈した。そもそも100年以上前に造られたパリのメトロ(地下鉄)には、バリアフリーの考え方はなかった。そのためエレベーターもエスカレーターもない。
新設のメトロはバリアフリーが考慮されているが、故障も多い。パリ市は、車椅子移動が可能なのは近年開通した14号線だけであることを認めている。セーヌ川を泳げるようにするプロジェクトには莫大な費用が投入されているのに、メトロ老朽化対策は手付かずだ。
現在、九つの駅で、エレベーター設置と通路の拡張、段差をなくす工事が行われているが、全体からすれば微々たるものだ。
公共バスには、乗客が車椅子で乗車できるスペースが設けられているが、複数の車椅子障害者が乗るようにはできていない。ただ、興味深いのは、一般の乗降客が障害者や高齢者の乗降を積極的に介助している姿をよく見掛けることだ。
フランスでは2005年に「障害のある人々の平等な権利と機会、参加と市民権のための法律」が可決された。
条文には、10年内に公共交通機関をあらゆる種類の障害者が利用できるようにすることが盛り込まれている。そのため、05年以降の駅、路線、車両はすべて、アクセシビリティー基準に準拠して設計されている。世界最古の地下鉄の歴史は誇るべきだが、バリアフリー化には気の遠くなるような予算と時間が必要となる。(A)