「露草も露のちからの花ひらく」(飯田龍太)。「露草」は初秋の季語で、青い花のすがすがしさがこの季節を表している。庭にこの草があって、6月初めに開花し、今も咲き続けている。花の時期は長い。
野草に興味を抱いて、その料理を試みてきたが、ツユクサの葉はお浸しでも天ぷらでもおいしい。癖がないからだ。この草はアオバナとか、ツキクサとか、ボウシバナとも呼ばれてきた。
ボウシバナというのは花の苞(ほう)が帽子のように見えることに由来する。この園芸品種であるオオボウシバナの種を分けてくれた知人がいた。4月に植えたところ、7月の初めに開花し、今も咲いている。
花の直径が4㌢もあり、大きいので見応えがある。花弁が3枚あり、2枚が澄んだ青色で、もう1枚はその下にあって、白くて小さい。花は強い陽光に弱く、午後にしぼんでしまう。しかし、日ごとに新たな花が咲いてくる。
滋賀県の草津市近辺にはこれを栽培している農家があるという。花から青汁を採るためで、桶(おけ)に入れて搾り、その汁を和紙に刷毛(はけ)で塗り、乾燥させる。これを水で溶かし、友禅染の下絵やお菓子の色付けなどに使う。
奥村土牛はじめ日本画家たちはツユクサに魅了されてきた。江戸時代の本草書『草木図説』にも紹介され、西洋の学者を驚嘆させたという。線描で緻密に描かれ、葉と他の部分とのコントラストが見事。この小さな植物にも自然界の法則と造化の神秘が宿っている。