【上昇気流】台風に思う「咸一其徳」

台風の人工衛星画像(平成25年台風第30号、2013年)(Wikipediaより)

「吹く風は時計と逆回りだから、木の揺れる方角を見て台風の位置を知りなさい。台風の目に入ると、風が止(や)み青空が見えたりするが、安心して外に出てはいけません」――。台風が来るたびに小学校の先生の言葉が蘇(よみがえ)る。

大阪市ではかつて「台風授業」があった。1961年9月のことだ。後に第2室戸台風と命名された台風が明日にも近畿地方に上陸するという。それで急遽(きゅうきょ)、先生が台風の話をした。

2年前の59年9月には伊勢湾台風による高潮が東海地方の沿岸を襲い、5000人もの命を奪った。家を失った児童らが気流子の小学校にも転校してきた。それだけに先生の話には熱がこもった。

当時、大阪には室戸台風(34年9月)の記憶が生々しく残っていた。この犠牲者は3000人。大阪市の小学校では多くの校舎が倒壊し、教職員や児童ら267人が亡くなった。

その殉職・殉難者を慰霊する「教育塔」が大阪城公園にある。大阪教育界が発議し全国の教育関係者の追悼施設として36年に建立された。教育塔内正面の塔芯文は「咸一其徳」(みなその徳を一にする)とあった。教育勅語の一節である。

それが戦後、日教組が教育塔を管理するようになると「やすらかに」と改変してしまった。勅語抹殺である。だが、児童を救おうと犠牲になった教師が少なからずいる。その徳は模範として共有されてしかるべきではないか。気流子の先生がご存命であれば、そうおっしゃるに違いない。

spot_img
Google Translate »