コロナ後のタイは、観光産業が息を吹き返している。政府が掲げる目下の目標は、年間4000万人近い外国人観光客の受け入れだ。
バンコクでは、そうした外国人観光客の受け皿作りの一つとして、無電柱化を推進中だ。
一年中、どこかで工事が行われているバンコクはリスキーな街だ。
歩道の真ん中に穴が開いていたりして、よそ見でもして歩いていようものなら穴に落ちてしまう。
リスクは地上だけではなく、空中にも存在する。クモの巣のように張り巡らされた電線は、電柱と電柱の間を何十本もの束となって結ばれ、建物や各家庭に分岐している。歩道から見上げれば、壮絶な電線が空を覆い、雨期の空のような叢雲(むらくも)状態となっている。
スコール時には、風にあおられて切れたのか、火花を散らしながらぶらぶら揺れている電線もある。
こうした危なっかしく見た目も悪い電線を、地中に埋め込み快適なバンコク生活を送ってもらおうというのが無電柱化プロジェクトの目的だ。
バンコクの銀座通りとでもいった華やぎのあるアソークモントリー通りでは今年4月から、電柱を撤去して電線、電話線などを地中に埋設する工事が行われている。ルムピニ公園北側のサラシン通りでは既に、無電柱化工事が完了している。
バンコクではこれまでに73キロの区間で工事を終え、5年後までにさらに240キロの区間を無電柱化する予定だ。変わる時はダイナミックに豹変(ひょうへん)するタイの底力を感じさせる。(T)