【政界一喝】自民総裁は危機管理力が必須

9月12日告示、27日投開票で自民党総裁選が行われる。岸田文雄首相の不出馬発表を皮切りに、日本政治は未来に向け、新しい変化に一縷(いちる)の望みを見いだした。長きにわたる不支持政権の重苦しさから、国民は解放されそう、だからである。ちょうど1カ月後に選ばれる新しい自民党総裁が、その後、政府の次期首相となる。国民は主権者としての自覚を高め、総裁選に向き合うべきだ。

告示前、現状で12人、立候補者予想の顔触れがメディアに並ぶ。40代若者も2人、女性も3人含まれる。立候補表明や、事前の記者会見を通じて、人物と公約、政権構想が徐々に広まりつつある。

岸田政権が深めた政治不信と、それによる自民党各議員の、来たる解散総選挙での議席確保への不安感が、党総裁選に良い緊張感をもたらしている。告示後は各候補者の全国遊説、政策討論会が注目される。

小林鷹之氏(49)が立候補表明の先陣を切った。若さ、脱派閥を掲げた刷新感があり、党内人材の層の厚さも示唆する。長老政治からの脱却に挑戦する形だが、「岸田路線の継承」を掲げ、総裁選に関わらないと表明したはずの岸田氏から、頑張れとエールを送られるようでは国民の不信を買う。

知名度と人気から本命視される小泉進次郎氏(43)だが、総裁選後、10月27日とも言われる解散総選挙への顔として好都合、との政局的な思惑に偏りがちだ。党内非主流派のキングメーカー、菅義偉前首相が満を持して推すところだが、それは一昨年、国葬儀の追悼の辞でたたえた「安倍元首相の判断力」にも符合するのか。

過去、小泉氏は環境相(2019~21年)として国際舞台での振る舞いに精彩を欠いた。若者らが、いわゆる「小泉構文」を話題にしても通常、面白おかしくの域を出ない。立候補はよいものの、首相の器としては、まだ先ではないか。

期せずして近日、中国では「反スパイ法」容疑で拘束されていた大手製薬会社の邦人社員が起訴され、国内ではNHKの中国籍スタッフが「尖閣は中国領土」などと誤情報を発信した。日本の国民、国家を護(まも)るに深刻な脆弱(ぜいじゃく)性が露呈した事件だ。

国民の国防意識の高揚と共に、国家として防衛、外交、情報政策を精査し、必要な法整備を進める危機管理のリーダーシップの要請が極度に高まっている。新しい総裁に必須の条件だ。

その上で、核保有と専制政治体制の3カ国の脅威にさらされる極東にあって、新総裁は、ハリスまたはトランプ大統領を頭とする同盟関係の米国とも、また隣国の韓国とも、主権国家としての日本を背負って毅然(きぜん)と対応できなければならない。

加えて、その脅威を共有する東南アジア各国とも、強固な関係構築を着実に進める戦略性が求められる。台湾有事には特別な意識が不可欠だ。

岸田政治には国家観が欠如、と多くの識者、国民から批判された。体裁の良い各国との外交関係、国民の血税バラマキの一方で、日本の魂とアイデンティティーを押し殺して振る舞うような首相は二度と選びたくないところだ。

国家ビジョンを示し危機管理に当たる政治のトップが、国民と国家のために専心、尽力し、その上で国民への説明を嘘(うそ)、隠し事なく丁寧に行えば、必要な手続きを経ながら、同時に政治不信の払拭(ふっしょく)も果たせるであろう。(駿馬)

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