今年はお盆を過ぎても暑さが続いた。福岡県太宰府市は8月23日で36日連続の猛暑日となり、国内猛暑日最多記録を更新中である。近所に住む1人暮らしの高齢者の方は徒歩10分のバス停に行くことさえ躊躇(ちゅうちょ)してしまうと嘆いていた。だから、住み慣れた戸建てを売却して、駅近のマンションに住み替えを考え始める人が多い。
人口が減るというのに、駅周辺にわずかに残っていた農地や林が次々とマンションに変わっていく。最近の新築マンションや戸建て住宅はコンクリート塀だから、ますます街から緑の景観がなくなっている。
そして高木の街路樹は気温を1、2度下げる効果があるが、ケヤキやイチョウといった落葉樹が低木に植え替えられている。高木は樹木の管理や落ち葉の掃除が大変だからだが、信号機のある交差点付近は交通標識の妨げになると伐採されてしまう。
種々の事情で、街から樹木や畑がなくなっていくと、いつしか人間の暮らしや生き物の生態系に影響が出てくる。息子が小学生の頃、家の階段の踊り場でカブトムシやコガネムシを見つけ、興奮していたのを覚えている。それを家で飼っていたが、すぐに死んでしまった。生き物の死から学んだことも多かった。近年はベランダでバッタやカブトムシを見ることは、めったにない。
今でも虫取りをするという解剖学者の養老孟司さんは、「子どもは本来『自然』に近い存在」「都市と子どもは折り合わない」と、著書『子どもが心配』で書いている。自然を壊す都市化、子供と自然が切り離されていくことを心底心配している。
子供は外で遊ぶのが基本だが、子供が外で虫取りをしていたら、熱中症が心配になるほどである。
ずいぶん前からゲーム脳の危険性が指摘されながら、この猛暑で子供のゲーム時間は増えるばかり。孫育ての年齢となって、子供の心配は尽きない。
(光)