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日本歌謡史研究の第一人者、長田暁二さんが著した貴重な本の一冊に『戦争が遺した歌』(全音楽譜出版社)がある。戊辰戦争から太平洋戦争に到(いた)るまで、国民に歌われてきた253曲が収録された。
長田さんは曲の背景や歌われた状況を記して、その時代の雰囲気を伝えている。近代史を知る上での第一級の史料と言えるもので、副題は「歌が明かす戦争の背景」。懺悔(ざんげ)の気持ちで刊行したという。
時代をたどっていくと、社会の悲劇性がより深くなっていくことが分かる。東洋大学名誉教授の西川佳秀(よしみつ)さんは、作曲家の古関裕而と軍歌について論じた「戦場と甲子園 繋がる昭和」を小紙に寄稿(8月17日付)。
古関が戦時中に作った軍歌のいくつかは、戦後作られた名曲と曲想が似ているものがあり、彼の曲作りは「ただ、青年のひた向きな生き様に感動を覚え、自らの楽曲でそれを称えたかったのである」と記す。
西川さんが記したように、戦後は軍歌を耳にする機会は希(まれ)になった。この記事を読んだ翌日、BSテレ東で古関を回顧する「昭和歌謡の巨星たち」を再放送し、古関がどのように曲を作ったかを紹介していた。
勇ましいだけでは歌を作ることができず、現地取材を丹念にしていた。「若鷲の歌」の時には、勇壮なメロディーを考えていたが、土浦海軍航空隊に一日入隊し、兵士らの琴線に触れて短調の曲に変える。歌には若者たちの生の感情が写し取られた。それが貴重なのだ。






