
次なる国家指導者を選ぶ秋(とき)が来た。9月の自民党総裁選のことである。目下、多数の出馬が予想され乱戦模様だという。果たして一推しはどなただろう。
数学者、藤原正彦氏の一推しは「上杉鷹山(ようざん)」である。「上杉鷹山のような哲人がトップにいたら、その人に政治をまかすのが最善です。間違っても民主主義、すなわち多数決にしてはいけません」(『国家と教養』新潮新書)。残念なことに総裁選は多数決。それに哲人はお見受けしない。
鷹山は江戸中期の米沢藩主である。藤原氏は先月、『藤原正彦の代表的日本人』(文春新書)を上梓(じょうし)し、その中でも取り上げている。『代表的日本人』といえば、明治のキリスト者、内村鑑三のそれが知られるが、むろんそこにも登場する。
家督を継いだ際、春日大明神に「民の父母」になるとの誓詞を奉納し、それを行政システム化した。領内の各地に「教導出役」(行政)と「廻村横目」(警務)をペアで配置。
教導出役には「地蔵の慈悲を主とし、内に不動の憤怒を含むべし」、廻村横目には「閻魔の憤怒を表し内に地蔵の慈愛を含むべし」と諭した。まさに慈母と厳父。それが「民の父母」の代身である。
9月には立憲民主党の代表選もあるが、こちらは婚姻平等法案なるものを掲げ、現行法にある「父母」「父」「母」の文言を葬り、全て「親」に書き換えるという。同党が政権を獲れば、父母が消えてしまうのである。代表的日本人の鷹山は何と言おうか。





