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【羅針盤】自由民主主義国家群の連帯を

ロシアのウクライナ侵略が開始されて900日が過ぎた。常任理事国のあからさまな侵略行為で、国連の国際社会における安全保障機能は完全に破綻した。

日本人には、国連の発足以降、国連は国際正義を執行する場との認識が強く、これが、第2次世界大戦という弱肉強食、帝国主義戦争の勝者が、戦後の国際秩序を都合よく支配するためにつくった組織だという意識は殆(ほとん)ど無い。加盟各国の外交の戦場であるとの意識も少ない。

しかし日本人の国連への過大な期待とは裏腹に、過去80年弱の国連の活動を振り返れば、国連は、設立の最重要目的である「国際の平和と安全の維持」に関しては、殆ど機能不全だった。

冷戦下では、東西両陣営相互の拒否権行使で、安全保障の重要事項に関し議決機能を欠いた。冷戦の終焉(しゅうえん)は、世界の恒久的平和への期待を高揚させたが、現実には、冷戦下で強く抑制されていた領土、民族、宗教等の紛争が頻発し、国際情勢は著しく不安定化した。

今般のウクライナ侵略による安保理の機能破綻が与えた失望は、米英のみならず、常任理事国以外の加盟諸国においても極めて大きい。国連改革の努力は必要かもしれないが、見通し得る将来、安全保障・軍事面で国連に期待できることは殆ど無い。

しかし国連という固定的な国際組織を離れて、国際社会の状況を冷静に、かつ大局的に観察すれば、米国を中心にした主要自由主義先進諸国の協力で、「共同防衛=集団防衛=集団的抑止力の強化=国家間の戦争の封じ込め」という理念の下に、自由民主主義国家群連合とでもいうべき緩やかな国際的連帯が出来上がり、安全保障機能を発揮している。

多くのそれぞれ特色のある主権国家が併存し、テロや大量破壊兵器の拡散を含む複雑かつ多様な軍事・非軍事の脅威・危険因子が重層的に潜在している。それが流動的に変化しつつ突発的に世界の各所で顕在化する現代の国際社会においては、脅威の態様に応じて対応の枠組みが変わる点で複雑で多様、流動的だ。

しかし自由主義、民主主義、および人権の尊重を軸とする点では単純、強力かつ柔軟で、実効性のあるこの連帯を強化推進することが必要だ。

世界の隅々にまで2国間、多国間等、各種の自由民主主義的な集団安保体制を緩やかに張り巡らし、独裁的、非民主主義的、あるいは侵略的な国家があれば、その周辺の自由民主主義国家群が所要の各種集団安保体制で包囲し、押さえ込むことが肝要だ。(遊楽人)

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