
石川県能登地方では地震被害を受けた家屋の公費解体が少しずつ進んでいる。そんな中、黒瓦(能登瓦)がつくり出す独特の景観が失われるのではないかとの懸念の声が上がっている。
県が主催し住民たちが復興ビジョンを語る催しでも、能登瓦の景観を守ってほしいという声が多数の参加者から出ていた。そういう声は他地域から移住してきた人に多かった。灯台下暗し、能登に住み続ける人には当たり前の景観で、そのユニークさに気付かないということだろうか。
南欧では赤茶系の瓦屋根が多いが、その統一感が美しい景観をつくり上げている。能登瓦の家並みがなくなれば、能登は能登でなくなると言っても過言ではないだろう。黒く重々しい能登瓦の屋根だが、夏場は雪に耐えるために塗られた釉薬(ゆうやく)が日の光を反射してきらきらと輝く。それがまた美しい。
七尾市の全壊したある寺を再訪すると、本堂跡は更地になっており、傍らに瓦が積み上げられていた。再利用のためだろう。
一方で解体中の民家では、屋根の上から作業員がダンプカーに瓦を放り投げていた。その度に瓦の割れる音が響いていた。解体も急がれるが、能登瓦はできるだけ壊さずに景観を守ってほしい。
地元紙北國(ほっこく)新聞によると、世界的建築家の坂茂(ばん しげる)さんが中心となって能登瓦の回収プロジェクトが珠洲市で始まっている。県は世界的な観点から能登の将来を考える人たちの意見を参考に未来像を描いていくべきである。







