【上昇気流】「盆と正月」一緒に来れば

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「盆と正月が一緒に来たようだ」――。この譬(たと)えは喜ばしいことが続き目出度(めでた)いときに使うが、今年の正月は能登半島地震、盆は「巨大地震注意」の発表である。

そんな盆と正月が一緒に来れば……。何とも落ち着かない時節だが、それでも人は故郷(ふるさと)に向かう。

歌手、中島みゆきさんの「帰省」の歌詞が思い浮かぶ。……都会ではまるで人のすべてが敵のように押しのけ合ってゆくけれど、それが年に2回、8月と1月には、はにかんで道を譲る。「故郷からの帰り 束(つか)の間 人を信じたら もう半年がんばれる」。

故郷に帰れなくとも「如何(いか)にいます父母(ちちはは) 恙(つつが)なしや友がき」(高野辰之作詞・岡野貞一作曲「ふるさと」)と思いを馳(は)せ、「ふるさとは遠きにありて思ふもの」(室生犀星著「抒情小曲集」)と歯を食い縛る。盆と正月が一緒に来れば、人はもっと優しくなれるだろうか。

そんな故郷や応援したい地方のための「ふるさと納税」だが、昨今は返礼品目当ての寄付が増え、本来の趣旨から外れつつある。東京都荒川区では昨年、地方税が約12億円も減り、公共サービスの提供に齟齬(そご)を来すと疑問を呈している。こうした悲鳴は少なからず聞かれる。

地方の「消滅可能性自治体」が今春、話題になった。一方で他地域からの流入で人口が増えても出生率が低い「ブラックホール型自治体」も現れている。故郷は盆と正月だけのものではない。「国土のグランドデザイン」をいま一度、考える時節としたい。

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