「多様性」に想定外の反発 フランスから

人類の共存をうたう五輪精神は近年、多様性をテーマにすることが多い。ロンドン五輪は、同国の50を超える人種、300以上の言語文化の多様性、障害との共存がテーマだった。16年リオ五輪では先住民族、ポルトガル人入植者、アフリカ系黒人奴隷、混血や日本人移民などの歴史に焦点が当てられ、東京五輪はスポーツの感動で一つになるがテーマだった。

今回のパリ五輪では、フランス革命への称賛と性的マイノリティー(LGBTQ)の受容が強調され、ダビンチの「最後の晩餐」を想起させる一部のプログラムが宗教への嘲笑と受け取られた。過去の多様性や包摂性とは異質な展開だった。

同性愛者などによるパフォーマンスは物議を醸し、宗教世界からの反発は強まるばかりだ。同性愛はフランス歴史で無視できないもので、カトリックでも認められず、フランス第2の宗教勢力のイスラム教も禁止している。そのため、開会式や閉会式の演出を担当し、自らも同性愛者のジョリー氏や出演者は世界から激しいバッシングに遭った。フランス革命で勝ち取った平等、人権をLGBTQとの全面共存に進化させたかったのだが、世論は思ったほど前向きではなかった。

ロンドン五輪では障害を持つ子供たちが開会式で国歌を歌い、パラリンピック後の市内パレードは過去最高の観客動員となり、世界に感動を与えた。だが、LGBTQは宗教だけでなく、一般市民の間にも大きな違和感をもたらし、差別対象となる人種や肌の色、宗教、障害者のカテゴリーには入れそうもないことを露呈した。(A)

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