南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」が気象庁から出され、さまざまな影響が出ている。対象地域も茨城から沖縄まで29都府県と広い範囲に及んでいる。東海道新幹線も1週間ほどは速度を落としての運行となる。
お盆の帰省シーズンを直撃した形だが、それほどの混乱が起きていないのは不幸中の幸いと言うべきか。実際に南海トラフ地震が起きれば、列車の遅れだけでは済まない。
2004年の新潟県中越地震では、上越新幹線が脱線し、長期運休を余儀なくされた。脱線防止のため、大きな揺れが来る前に速度を落とす「地震防災システム」も導入された。それでも22年3月、最大震度6強を観測した地震で東北新幹線が脱線し、完全復旧まで1カ月を要した。
首都圏と関西圏を結ぶ大動脈の東海道新幹線が不通になった場合、南海トラフ地震の被災地への救援、復旧への影響は計り知れないだろう。交通網が寸断されたときどんなことが起きるかは、能登半島地震の被災地を見れば明らかだ。
東名高速道路の過密化と地震や高潮などへの対策として、10㌔ほど内陸側に新東名(第二東名)が12年に開通した。東海道新幹線も、災害時のバイパスの役割を果たす第2の路線が必要だろう。それがJR東海が建設を進めるリニア中央新幹線だ。
強い国土を造るには、災害に対応できる交通網の構築が不可欠だ。リニアは経済活性化だけでなく、列島強靭(きょうじん)化の鍵でもある。国を挙げて建設を急ぐべきだ。