小説家、遠藤周作は著書『愛情セミナー』(集英社文庫)で子供の教育について「わが子という作品をつくるのは一人一人の母親によって違うべき」「子供の心や体の状態を一番よく知っている母親や父親がそれは相談しあって考えるべき」だと。
「まして、学校の先生に教育はお任せするのはとんでもない話だ。学校は勉強を習うところ。勉強は教育ではない」と書く。
今は夏休みで、電車なども午前中は空いているかと思いきや、さにあらず。小学生とおぼしき子供やその親で結構混み合っている。親が手を掛ける「教育」時間かとも思う。
ところが夏休みを前にNPO法人「キッズドア」が、困窮する子育て家庭1800余の世帯へのアンケート調査の結果を公表。夏休みは「今より短い方がよい」あるいは「なくてよい」という回答が6割に達した。
理由は「子供の昼食を準備する手間や時間がかかる」「特別な体験をさせる経済的余裕がない」などが多数を占めた。ほかに「長期休み明けに、家族で旅行に行った友人の話を聞いて羨ましそうにしているので格差を感じる」という意見もあった。
しかし、わが子を一番よく知る親が最も適した教育方法を考えられるのもこの期間だ。遠藤は同書で「子供はあなたの作品になる。小説家は自分だけの方法でおのれの作品を書く。すべての小説家に共通した小説作法などありはしない」という。経済的な苦労があっても、親子合作の時間を何とかつくりたい。