9月下旬、3年間の任期満了に伴う自民党総裁選が行われる。野党各党が著しく政権担当能力を欠き、自公政権が続く今日、実質この総裁選で次の首相が決まる。決めるのは党所属の国会議員票と、この議員票と同数に配分される党員票(109万余り)である。
候補者が3人以上で、結果として首位の候補が過半数の得票を確保できない場合、上位2人による決選投票となる。決選投票では議員一人一票はそのままで、党員票は党の各都道府県連票(計47)に圧縮される。自民党員となることで国民には参加の機会が与えられている。
直近のNHK世論調査では、国民の57%が総裁選に関心があるとの結果を得た。党内選挙ながら、政府の首班を現実的に決定し、国民一人一人の生活に関わってくる意味から、人物、政策を知るのに、国民は大いに関心を持つべきだ。
党の規定で12日間以上と定められ、実際に通例12日間であった選挙期間は今回、それよりも「できるだけ長く」、また国民に開かれた総裁選とすべく「公開討論会」の実施をと、自民党青年局(鈴木貴子局長)が岸田文雄首相(党総裁)と逢沢一郎選管委員長に求めた。党の現状に「危機感」を感じ、総裁選に党の「命運」が懸かっていると述べての要望であった。採用すべき意見だ。
政治資金不記載問題を通じて広がった、国内における政治不信もさることながら、地を這(は)うような低支持率のままの岸田政権が長期にわたって持続し、このことが国際社会からの外交上の不信感に繋(つな)がっている。2国間であれ、多国間であれ、各国は日本とウィンウィンの外交上の関係構築を将来に向けて展望できない現状だ。
総裁選は、日本政治に対するこうした国内外の不信感、閉塞(へいそく)感を打破する好機とすべきだ。岸田首相にも再出馬の機会は開かれているが、ここは国民の厳しい評価を謙虚に受け止め、不出馬を決断すべきではないか。
何より6月国会会期末までで衆院解散権を行使できず、そのことが首相としての支持基盤の弱さを露呈した。昨今の株価や円相場の歴史的な不安定は、確固たる日本の財政政策に基づき、国民と国家の財産を守るという、首相としての指導力の欠如を象徴した。
岸田氏の不出馬が想定されれば、少なくとも日本政治は現状の重苦しさから、出直しへの転換点に立つことができそうだ。
その上で、長老政治との批判を乗り越えるためにも、総裁選には女性と若者も立候補すべきだ。相応に与えられた選挙期間には、公開の場での政策論争も尽くし、メディアによる評価も大いに浴びるべきだ。候補者らは国民にじっくり向き合い、ビジョンや公約を掲げ、それらを必ず実現する意思をもって当選者は総裁になり、首相として日本国のために尽くしてほしい。(駿馬)