トップコラム【上昇気流】激減するカタツムリ

【上昇気流】激減するカタツムリ

カタツムリ

「木登りの子に先達のかたつむり」。小紙「歌集&句集」(4月27日付)に紹介された川嶋一美さんの俳句だ。幼子とカタツムリは相性がよく、木の上にいるカタツムリが先達のようだと作者は感じた。

雨の日によく庭で見掛けた記憶があるが、気付いてみると公園や庭に彼らはいなくなっている。カタツムリは日本に約800種が生息する。しかし、近畿地方ではその半数が絶滅の危機に瀕(ひん)しているという(小紙7月15日付)。

湿った落ち葉の裏などを好み、粘液を使ってゆっくり進む。移動能力の乏しい生物だ。東邦大学の脇司准教授によると、減少の原因の一つは「乾燥化」だそうだ。都市部の公園などでは落ち葉が除去され、隠れ場所がなくなった。

小さな生き物の小さな変化は、環境の大きな変化が背景にはある。東京都多摩市にある都立桜ケ丘公園を散策していたら、見慣れない薄茶色の鳥がたくさんいて、細流で水浴びをしていた。

バードウオッチングをしている人たちに聞くと、ガビチョウといい、この公園の主なのだそうだ。調べてみるとスズメ目チメドリ科の鳥で、侵略的外来種のワースト100選の一種だった。

1970年代に東南アジアから輸入され、野生化して、島根県や本州太平洋岸、中央高地などに定着したという。人を警戒しないのは、ペットだった経歴によるものなのか。生物界の異変はどこまで続くのだろうか。こうした環境をつくり出しているのも人間の欲心なのだ。

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