
米国にはもともとチップ文化があるが、近年は特に求められる機会が増えている。それは主に、タッチパネル式の決済機器が導入されたことによるものだ。コーヒーショップなどでこれまでチップが不要とされてきた場所でも、支払いをする際に、「5%」「10%」「15%」などと、チップの割合を示す選択肢が表示される。
この現象は「チップフレーション」と呼ばれる。これは「チップ」と「インフレーション」を合わせた造語だ。筆者には経験がないのだが、空港やスタジアム、カフェなどのセルフレジで、サービスを受けていないにもかかわらず、チップを求められることもあるようだ。
筆者はほとんどの場合、もともとチップが不要とされている場所では、「チップなし」を選択している。それでも、店員の視線を感じると、それがプレッシャーになり、思わずチップボタンを押してしまったことが何度かある。
カナダの非営利団体ディールエイドの調査によると、米国の消費者の51%が、チップを選択する画面が表示された場合、支払っている。サービス提供者への感謝や支援の気持ちの表れであればよいが、実際には68%の人が店頭でチップを求められた場合にプレッシャーを感じているという。
チップは日本人にとって馴染(なじ)みがなく分かりにくいものだが、米国人の間にも「チップ疲れ」を感じる人が増えている。分かりやすくするために価格にチップ代を含めるなど、なるべくストレスを感じないような仕組みにできないものかと思っている。(Y)