かつて、愛する恋人のために海を渡った犬がいたという。なんとその犬はガールフレンド(もちろん犬の)に逢(あ)いたい一心で、慶良間諸島の阿嘉島から座間味島までの直線約3㌔の海を泳いで渡ったというのだ。
この実話を基に製作された映画『マリリンに逢いたい』は、1988年に大ヒットを記録。県内外のみならず、国外にも広く知られることとなった。多くの読者にとっては既知のエピソードかもしれないが、恥ずかしながら筆者は先日、県内の友人からこの話を聞き、初めて知ることとなった。
この物語の主人公シロは、マリンスポーツのインストラクターやツアーガイドをしていた中村利一さんに拾われ、連日海で遊ぶうちに「犬かき」をマスターしたという。ある日、中村さんと船で座間味島に来ていたシロは、雌犬のマリリンと出会う。
それ以来、いとしいマリリンに逢うために何度も何度も海を泳いで島間を往復したというのだ。シロが泳いだ海域は流れが速く、人が泳いで渡ることは困難とされている。そんな危険な海を一生懸命に泳いで渡る姿はさぞ感動的であったに違いない。
さらに驚かされたのは、シロは実際に映画にも出演しシロ本人の役を演じていたことだ。残念ながらマリリンは交通事故で他界してしまい、別の犬が演じることとなった。
現在、阿嘉島港にはシロの、座間味港にはマリリンの銅像が、それぞれ向き合う形で建てられている。美しい自然の中で繰り広げられた動物の愛の物語に思いを馳(は)せるため、慶良間諸島に行く際は必ず立ち寄りたい場所だ。
だが、その前に筆者はDVDを探し、映画を見ることから始めなければならない(笑)。
(K)