
「もしトラ」が何かにつけて話題になるが、7月は「もしドラ」も見逃せない。ドラとは米国の経済学者、ピーター・ドラッカー(1909~2005年)のことだ。
作家、岩崎夏海さんの小説「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の「もしドラ」である。15年ほど前に話題になった。
女子マネージャーは目下たけなわの「夏の甲子園」(全国高校野球選手権大会)の都道府県予選でも活躍している。東東京大会で16強まで進んだ青山学院は、助監督とマネージャーをそれぞれ務める女子2人がベンチ入り。「打たせる前提のピッチング」をモットーに試合を盛り上げた。
「もしドラ」の女子マネージャーの目標は「社会に対する貢献」。プレーする選手や観客だけでなく、関わる全ての人に感動を。そこから「ノーバント・ノーボール」作戦が生まれ、実際の甲子園でもブームを呼び起こした。
価値を経済学の柱に据える。それがドラッカーの基本的な考え方だ。価値とは物事の役に立つことをいう。役立てば生産者も消費者も喜び合える。それが利他の経済。ところが、現実は利己的だ。
それは価値を基礎に据えない「近代経済学」と、労働に究極の価値を置く「マルクス経済学」の両者によってもたらされている。ドラッカーはそう考え、その克服を目指した。世界では「もしトラ」が注目されるが、身近な高校野球にはどんな「もしドラ」があるのか、見届けたい。