短い梅雨が明け、学校は長い夏休みに入った。休み中、子供の安全な居場所をどう確保するか、小学生を持つ共働き家庭の親には頭の痛い夏である。
東京都足立区のように公共施設を子供の居場所として開放したり、こども食堂や日本財団の「子ども第三の居場所」など、子供の居場所を提供する民間ボランティア施設も増えてきた。
ただ、最近の親は教育ニーズが高く、塾を第二の子供の居場所とする家庭も多い。
こんな親のニーズに合わせて、学習塾と居場所を一緒にしたような付加価値の高い子供の居場所があちこちに生まれている。昨年11月に最寄りの地下鉄駅前の商業ビルに誕生した子供の放課後施設もその一つ。神奈川県で平均年収が高いと言われているニュータウンにある。
どんな施設かというと、まず児童5人に1人のチューターが学習指導に当たる。保育士配置基準は4~5歳児で25人に1人だから、すごい基準である。
そして、英語やAI算数、理科実験、書道に作文ディベート、絵画造形やダンス教室など、習い事が驚くほど充実している。当然、月々の費用は週5日で7万円前後と高額だ。さらに預かり時刻は夜9時まで。オプションで送迎や夕食も付く。
紹介文に「『あったらいいな』をすべて備えた総合教育機関」とあるように、まさに至れり尽くせりである。
ただ、こうした付加価値の高い施設を利用できる家庭はごく一部。しかも、ここなら絶対に安心・安全とは言えなくなっている。安心・安全であるはずの公園や塾などでも、子供が危険にさらされる事件が起こっているからである。
正論をあえて言えば、家庭や地域社会の安定なくして子供の安心・安全など守れるのかということだ。残念ながら、こども家庭庁が推進する「すべての子供が安全で安心して過ごせる居場所づくり」にはそうした家庭と地域の視点が欠けている。
(光)