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【上昇気流】家持のユーモアのセンス

ウナギのかば焼き

暑さのために食欲が失せ、そばやそうめんのような麺類が食べたくなる。逆に焼き肉などを好む人もいる。人それぞれだが、食欲が減退すると体力低下に直結するから厄介だ。

夏バテ対策としては、ウナギのかば焼きがある。古代からウナギは滋養にいいと知られていたらしい。万葉集編纂(へんさん)者の大伴家持(おおとものやかもち)は、友人の石麻呂にウナギを食べることを勧めている。「石麻呂に吾(わ)れもの申す夏痩せによしといふものぞ鰻(むなぎ)とり食(め)せ」。

それほど石麻呂は痩せていて不健康そうに見えたのだろう。ただ、家持はこの友人をからかうために戯れに歌を贈ったようだ。勧めていながら「ウナギを獲(と)りに川に行ってはいけませんよ、痩せているので川に流されてしまうだろうから」とも次の歌では詠んでいるからだ。

家持のユーモアのセンスが光る作品だが、当時は川に獲りに行かないとウナギは手に入らなかったことが分かる。こうしたユーモアを見ると、古代から現代に至るまで人の心は変わらない。

明治時代の正岡子規となると、病床にあっても盛んな食欲を示したことはよく知られている。エッセーを読むと食べ物の記録が多い。食べることが大きな楽しみだったのだろう。

そんな子規はスケッチで草花を描いているが、食べ物の絵も多い。明治35年の7月には、サクランボやスモモ、桃、ナスなどが描かれている。子規の生きたいという思いが反映しているせいか、どれもおいしそうで生き生きしている。

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