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モクセイ科トネリコ属の樹木、アオダモやトネリコは野球のバットの素材として用いられている。ピッケルのシャフトもメタルの登場以前はこれらの木が使われてきた。弾力性があり、固く強靭(きょうじん)で、重くはない。
縄文時代の遺跡から棍棒(こんぼう)が見つかり、トネリコだったという。昔の人々の樹木への関心は現代人の比ではなかったのだろう。コウゾ、ガンピ、ミツマタは和紙に使われてきた。
ミツマタが登場するのは江戸時代だ。柔軟性があり強靭で丈夫。今日では紙幣に使われている。新紙幣が発行され、渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎と新たな人物が登場した。最新の偽造防止技術も施されている。
ところでミツマタの大半は、ネパールはじめ外国産が占めているという(小紙7月3日付)。ネパールへは日本から農業の技術指導者らが派遣され、果樹栽培などさまざまな分野で取り組んできた。
ミツマタの栽培は、政府刊行物を扱う「かんぽう」(大阪市)が貧困対策として1990年代に支援を始め、2016年に国際協力機構(JICA)に委託された。栽培や加工事業に取り組み、現地の農家にとって貴重な現金収入になっているという。
この木は和紙の原料としてだけでなく、花が茶席を飾る茶花としても用いられてきた。早春の山に咲く花は、丸っこく、黄色で可愛(かわい)らしく、群生地には多くの観光客がやって来る。枝が3本に分かれて次々伸び、その規則性に見とれてしまう面白さだ。