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【羅針盤】学生を陸自任期制自衛官に

自衛隊が発足してから今年で70年となる。発足直後から、「憲法違反」という批判にさらされながら、国民への貢献の着実な積み上げで、国民の自衛隊への信頼は高まり、政府世論調査で自衛隊に良い印象を持つ人は、2022年に91%に達した。

しかし一方で、国民の自主的な国防意識はというと、絶望的と言えるほど低調である。

「もし戦争が起こったら国のために戦うか」という問への答えで、「はい」の比率が日本の場合13・2%と、世界79カ国中、ダントツの最低である。米中との厳しい戦いを勝ち抜き、「はい」の比率筆頭のベトナムの96・4%とは天地の差がある。(世界価値観調査)。

また少子化が進展して、自衛官の募集適齢人口が急減していることも極めて心配だ。

他方、高齢化の進展に伴い親世代は老後に備える経済的負担が増大する。学費の援助を期待できない苦学生の数は増える。

これらの難題を打開する第一歩として、陸自の常備任期制自衛官に、全日制の大学生、短大生らを採用することを提案したい。

現在の陸自任期制隊員の主力は、18歳から20代前半程度の短任期の若者だ。この年齢層は、まさに大学等の在学年齢層に一致する。もし、この層を任期制自衛官に採用できたら、質の高い募集適齢人口が飛躍的に増える。大学生の学業生活を見ると、年間通学期間は約6カ月で、残り約6カ月は、春と夏に2回、冬に1回の長期休暇だ。

この期間は、本来は自主研修期間だが、内容は学生の裁量に任され、アルバイトや行楽に大部の時間が費やされている。相当のまとまった時間を自衛隊の訓練に当てることは十分可能だ。また通学時期でも、大学などの講義等の時間は、多くて1日4~6時間程度で、余暇を訓練に充てることは可能だろう。しかも、対象の若者たちは、資質的には比較的上の方に属する者で、自衛官として養成する訓練時間を短縮する可能性もある。

従って、大規模システム装備品・基地機能等を24時間稼動させることが勤務・訓練そのものの海空自衛隊の勤務態様では難しいかもしれないが、陸上自衛隊では、大学生らに学費を稼ぐ職と食住を提供し、学業の余暇を利用して十分に訓練効果を上げることが可能だ。

また、これら未来の日本社会のリーダーが、その青年期に、軍事・安全保障などについて実体験することが、日本の将来に与えるメリットは計り知れない。実現に踏み出すべきだ。(遊楽人)

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