天皇皇后両陛下がご夫妻で初めて英国を訪問される直前、チャールズ国王の公式誕生日を祝う閲兵式が6月15日に行われたことを伝える報道があった。普段なら「そうか」と聞き流していたはずだ。が、報道によると、チャールズ国王の実際の誕生日は11月で、6月がちょうどいい気候なのでこの月に公式誕生日を祝うというのだ。
ロンドンの気候を調べると、6月半ば~9月半ばの3カ月だけ、晴れ(一部曇りを含む)の日が5割を超える。一番晴れの日が多いのは7月と8月だが、この2カ月は1年で一番暑い月(とはいっても、たかだか平均最高気温23度だが)でもあるので、同20度前後の6月が屋外で閲兵式を行うのに一番いいのだろう。
「ジューンブライド」(6月の結婚・6月の花嫁)という言葉にはかつて違和感を持っていた。もちろん、英国はじめ欧州では本当に結婚式にふさわしい季節なのだろう。とはいっても、日本ではちょうど梅雨時なので、西欧の神話や風習が起源の伝承に拘泥することはないはずだ。
幼い頃の梅雨のイメージとして一番しっくりくるのは、北原白秋作詞の童謡『雨』だ。「雨がふります、雨がふる/遊びに行きたし、傘はなし/紅緒の木履(かっこ)も、緒が切れた」。しとしとと雨が降り続く梅雨と貧しさからくる憂鬱(ゆううつ)さとをうまく表している。当時はよく雨漏りの水を受ける、たらいのお世話になり、とても同じ白秋が作詞した童謡『あめふり』の一節「あめあめ、ふれふれ、母さんが、蛇の目でお迎えうれしいな」という気分にはなれなかった。
しかし時は流れた。雨が降り続くたびに、たらいやボウルで水を受けた幼い頃の体験を持つ人は大きく減った。その一方で、梅雨時に途方もない豪雨に見舞われ、大水や土砂崩れの被害に遭う家屋は毎年のように増えている。様変わりの梅雨はとても喜ばしい変化とは言えない。
(武)