20年ぶりとなった日本の新紙幣発行に韓国が刺激されている。まず新1万円札の“顔”がなぜ渋沢栄一なのかと噛(か)みついたのだ。渋沢は日本では「道徳経済合一説」を説いて500社以上の企業に関わった近代日本経済の父。だが、こちらでは「植民地時代に朝鮮で経済侵奪した張本人」として、すこぶる評判が悪い。統治期に活動したのは事実だが、侵奪ではなく発展のために骨を折った渋沢の動機が理解されていないようで残念だ。
ところで韓国で最後に新紙幣が発行されたのは15年前の5万ウォン(約4500円)札だった。当時、詳しい経緯を知らなかった筆者はなぜ切りがいい10万ウォン札を発行しないのかと思ったものだ。10万ウォン札発行が見送られたのは、“顔”として選定された独立運動家の金九を巡り国内の一部保守派が反発したのが原因だった。おカネを勘定する時、5万ウォン札だと「5、10、15、20、25…」という具合に5万ウォン単位で数えねばならず、ちょっと不便だ。
新1万円札でもう一つ韓国人が受けた刺激は、次の10万ウォン札の“顔”をどうするかという議論が再燃しそうなことだ。どうも韓国も実業家がいいのではないかと思い始めている節がある。これまで韓国の紙幣は朝鮮時代の儒学者の肖像画ばかりが用いられてきたが、「目指すべき新しい時代」を連想させる人物がいいという意見も聞かれる。保革対立が激しいお国柄、果たしてそこから自由でいられる“顔”が見つかるだろうか。(U)