温暖化の影響で日本の猛暑日は年々増えている。この20年で熱中症死亡者数は約5倍になったといわれる。全国地球温暖化防止活動推進センターの「2100年末における真夏日の年間日数予測」によると、東日本太平洋側の真夏日(最高気温30度以上の日)は約105日、西日本太平洋側は141日になると予測している。
こうした温暖化の影響は山のあちこちで見られる。6月末、日光の観光地や学校周辺にクマが出没し、大騒ぎになった。その直前、日光を訪れた際にはクマはいなかったが、何頭ものシカに遭遇した。
日光いろは坂沿いの林床に目をやると、山草が伸びる初夏に下草刈りをしたような状態になっている。環境アドバイザーの知人は「シカが食べ尽くしてしまうからだ」と言っていた。
初夏によく訪れる山梨県都留市にある三ツ峠山(1785メートル)。山の周辺にはアツモリソウやカモメランなど希少な高山植物が自生している。近年は盗掘やシカによる食害から保護するために登山道沿いに高い保護柵が張られ、不自然な風景が広がっている。それは、柵の内側と外側との植生が明らかに違っているという不自然さである。
柵の外はシカが好まないトリカブトやマルバタケブキだけが異常に多く、複数のカブが根でつながるテンニンソウがあちこちに広がっている。他の植物の領域を奪って繁殖し、生物の多様性を損なっているのだ。
三ツ峠山から御巣鷹山に向かう登山道には厳重に植生保護されている園地がある。園地の中を歩いていると、女性登山者が50㌢四方の頑丈な金属ケージの中をのぞき込んでいた。何かと思ったら、キバナノアツモリソウという絶滅危惧種の地生ランである。希少種を保護することができないのである。
山に立ち入れば、地球規模で生態系の異変を肌で実感できる。酷暑の夏は山に行こう!
(光)