トップコラム【上昇気流】事件現場と推理の間

【上昇気流】事件現場と推理の間

推理小説や探偵ドラマが趣味の方であれば贔屓(ひいき)の作家、探偵があるだろう。コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ、アガサ・クリスティのエルキュール・ポアロら古典的名探偵は、時代は下っても人気は尽きない。

とはいえ最近のテレビドラマでもこの種の刑事モノが多いと感ずるのは気流子だけだろうか。あえて言うと複雑な現代社会においてなかなか物事の真相が明らかにされない閉塞感のある状況下で、快刀乱麻のごとく事件解決に向かう展開がウケるのだろう。

ドラマや小説のことと一蹴するなかれ。それなりに警察関係者の考証も踏まえているようだ。今日のような捜査方式がなかった頃は犯人摘発が難しかったのではと想像するが、そうでもないらしい。

鑑識が専門だった知己の刑事によると、18世紀初頭の日向延岡藩の捜査役人の心得には「現場には銀の簪(かんざし)を持って行け」とあった。銀は毒物に反応するので害者の口に入れて確かめるなどした科学的(化学的)手法も当時からあったというから驚く。

さらに当時は「五人組」制度が徹底されていた。五人組というと相互監視による密告制度のようなイメージがあるが、相互扶助の役割も果たす最小の治安組織だったとも言える。

こうした情報網や人間関係が捜査の大きなカギを握っていたわけだ。現代は指紋照合やDNA鑑定、監視カメラなど科学的利器が捜査の進展を促しているが、ヒューマン情報がより重要なのは昔も今も変わらない。

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