【羅針盤】露朝の同盟復活に対処を

先月、北朝鮮を訪問したロシアのプーチン大統領と金正恩朝鮮労働党総書記は両国の「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。同条約には一方の当事国に対する侵略があった場合、保有している全ての手段で遅滞なく軍事支援を行うとの相互軍事協力条項があり、冷戦時代のソ朝友好協力相互援助条約と同等の軍事同盟が復活したと見られる。

昨秋の金正恩総書記訪露以来、北朝鮮が大量の砲弾をウクライナの戦場に供給するのと引き換えにロシアからの軍事技術を得る露朝接近が進んでいる。ウクライナ戦争の激化と北朝鮮の軍事力強化が憂慮されていたが、露朝蜜月の進展は、欧州・東アジアの安全保障リスクをさらに高めるものとなった。

北朝鮮は、2021年に「国防5カ年計画」を発表し軍事力の強化に突き進んでいる。核兵器の小型・軽量化、戦術核兵器、「超大型核弾頭」、「極超音速滑空飛行弾頭」、固体燃料推進式大陸間弾道ミサイル(ICBM)、無人偵察機、原子力潜水艦、軍事偵察衛星などを掲げている。

最終年の26年は、党創立80年の節目でもあり、金総書記は、自らの威信を懸けて邁進(まいしん)している。

しかし、打ち上げ失敗続きの軍事偵察衛星や、原子力潜水艦、弾頭の大気圏再突入技術など北朝鮮の技術力では難しく、喉から手が出るほどロシアからの軍事技術支援を必要としている。

金総書記の前のめり姿勢と同盟復活強調の裏には、朝鮮半島有事におけるロシアの「自動的軍事介入」復活と体制保持に軍事大国ロシアの後ろ盾を得たい思いが読み取れる。この先、露朝の軍事交流や共同訓練・演習、ロシアからの武器供与などが具体化するであろう。

故金日成主席以来の統一政策の放棄を宣言し韓国を「主敵」と位置付けて対決姿勢を強め、今や戦術核の先制使用も辞さないと威嚇するまでになっている北朝鮮の軍事行動が一層大胆になると予測される。差し迫った東アジアの脅威と認識すべきであろう。

中朝には自動介入が規定された中朝友好協力相互援助条約がある。中露は同盟関係ではないが近年、日本周辺で戦爆連合の共同飛行や軍艦の共同航行、演習を繰り返している。中朝露の軍事協力が懸念されるが、最も警戒すべきは台湾有事との連動である。

昨年の訪米時、ある研究所のシミュレーションで台湾事態と同時に中朝露が朝鮮半島での衝突事態と北海道への侵攻・陽動作戦を画策した場合の日米韓の対応、作戦行動について研究しており衝撃を受けた。

わが国では中国の脅威に南西シフトを進めており、北方が以前に比し薄くなっている。加えて米軍に3正面に対応する余裕はなく北海道方面は日本の独力対処にならざるを得ない。

斯くなれば台湾有事は日本有事に留(とど)まらず、第3次世界大戦と化してしまう。絶対に阻止しなくてはならない。

中国の台湾進攻や北朝鮮の暴発を抑止できるのは、日米、米韓の強力な同盟関係であり、厳然とした日米韓の軍事態勢である。しかし自衛隊は、必要最小限の防衛力として極めて表層的であり、予備戦力が乏しい。南西重視で北方の防衛に穴を開けてはならない。

独力対処能力の確保を念頭に質量両面にわたる防衛力の拡大が急務であり、今こそ声を上げて訴え、国論をまとめて早急に取り組む時である。(遠望子)

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