トップコラム【上昇気流】「職業倫理」の意識

【上昇気流】「職業倫理」の意識

電卓と請求書

「管理組合の前年度の資料を読んでいたところ、経理上のミスを発見した。これを指摘したいと思っている」と近所の主婦から話し掛けられたことがある。彼女は管理組合の経理担当の新理事になって間もない。仕事上、経理の経験もあった。

金額は聞かなかったが、少額の様子。前理事会が意図的にごまかしたわけでもなさそうだ。それで「そんなことを指摘しても、誰も得をしない。時間のムダ」と返答したところで話は終わった。

後日知ったことだが、彼女は本当に経理ミスを前理事会に指摘した。キチンと訂正された書類も各戸配布されて、一件落着のようだった。

気流子は数字の羅列だけの書類なぞ見ただけで気持ちが悪くなるような人間なので、訂正書類をそもそも読む気持ちがない。「終わったのか……」と思っただけだ。

半面、経理経験者である新理事会の経理担当者の立場を振り返ってみると「職業倫理」の意識があったのかもしれない。「ミスを知ってしまった以上、放置するわけにはいかない」という思いがあった可能性は考えられる。

気流子は校正の仕事をやったことがある。今でも校正ミスを見つける機会がある。校正ミスが気になってしまうのも職業倫理のようなものなのだろう。「ミスに気付いてしまった……」との思いは常にある。それでも、校正ミスを出版社に通報したことは一度もない。「誰かがミスに気付くに違いない」という根拠のない気持ちがあるためだろう。

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