重要な会議であればあるほど参加者以上に欠席者、あるいは招かれざる客の存在がモノをいう場合がある。イタリアで行われたG7サミット(先進7カ国首脳会議)もそうだろう。中国とロシアがまさに影の主役だったと言っていい。
中国の太平洋への覇権的動向が深刻化する中、北朝鮮の核・ミサイル開発、中露の軍事的協力が進む。日本としては中国を軸とした3正面の東アジアの安保情勢に危機感を深めざるを得ない。そのためには日米同盟関係の緊密化に加え、欧州との連携した対応が不可欠だった。
岸田文雄首相が「インド太平洋」を今サミットの議題に働き掛けたのは当然だろう。安倍晋三元首相が敷いた「インド太平洋ビジョン」の先見の明を改めて思う。
ただ、今回はロシアが攻勢を強めようとするウクライナに対し支援を強化する一方で急増する移民問題への対応で欧州域内各国は苦慮している。アジアへの関心が低下し内向きの懸念なしとしない。
ウクライナ問題はグローバル化に伴う安全保障はもちろん経済のサプライチェーンからも、アジアとくに台湾情勢に直結する問題との認識は深まった。この危機の構造は変わっていない。
岸田首相は「インド太平洋」を巡る中露への牽制が盛り込まれた首脳声明で事足れりとしてはならない。いかにその内実を実効ある形で迫っていくか。中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領に、逆に不在の重みを噛みしめてもらわねばなるまい。