CD消え 蘇るレコード

東京・銀座の山野楽器銀座本店前=2023年3月20日午前、東京都中央区

東京・銀座の「山野楽器」本店が7月末で、CD販売を終えるという。ネット配信による音楽視聴が中心になっているから、これも時代の流れか。このニュースを聞いて、レコード、ウォークマン、CDなど、その時々の音楽文化を象徴してきた人気商品を思い出し、懐かしさを覚えた。

初めてレコードを買ったのは中学生の時(1970年)だった。ラジオで聞いたビートルズの「レット・イット・ビー」に衝撃を受け、隣町のレコード店に自転車を飛ばし、シングル盤を手に入れた。

その数日前のことも今も鮮明に覚えている。雪降るクリスマスの夜、父(4年前に他界)がステレオを買って帰ってきたのだ。父はその理由を何も言わなかった。

それを1歳上の兄と共用していた勉強部屋に持っていった。安物のステレオとはいえ、感受性が強い少年時代にレコードでビートルズを聴いたのだから、その感動は今も新鮮に蘇(よみがえ)る。それがきっかけで、サイモン&ガーファンクル、カーペンターズ、ニール・ヤングなどのLPに、小遣いのほとんどを費やした。左投手だった兄は野球漬けだった。

ある時、小遣いが足りなくなった。父の財布からお金をくすねようと、親の寝室に忍び込んだ。財布は見つからなかった。代わりに、片隅にあった紙袋から、かなりの枚数の古いSP盤を見つけた。ほとんどが戦前はやった歌謡曲だった。父が晩年、カラオケで十八番にしていた田端義夫の「大利根月夜」もあった。もしかして、父はそれらを聞きたくて、ステレオを買ったのかもしれない。そう思うと、ステレオを独り占めしたことをちょっぴり後悔した。

デジタル音楽全盛となる一方で、温かみのある音質が楽しめるレコードブームが再来する。CD販売が終わると聞き、レコードと共に過ごした青春時代を思い出し、心が温まった。

(森)

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