トップコラム【上昇気流】(2024年6月12日)

【上昇気流】(2024年6月12日)

光とは何だろう。奈良大和路の道端で出会ったお地蔵さんは朝と夕では顔を変える。それが光の具合と知った時、不思議さを感じた。カメラ片手の散策に凝っていた頃の思い出である。

この記憶が福島県の郡山市立美術館で開催されている「印象派 モネからアメリカへ」と題した展覧会で蘇(よみがえ)った。米ウスター美術館所蔵のモネの「睡蓮」などが公開されているので足を運んでみると「光」の妙味が溢(あふ)れていた。

19世紀半ばにパリから始まった印象派の絵画が米国の画家を目覚めさせ、新興大陸国の自然と人を写し取らせている。風景画が多い中で、チャイルド・ハッサムの「コロンバス大通り、雨の日」は異色だった。画面全体がセピア色。濡(ぬ)れた石畳に馬車が走り、その御者の後ろ姿がスポットライトを浴びたように浮き上がる。その巧みさに感じ入った。

印象派の特徴は「光」である。印象派以前の画家の作業は室内だったが、そこへチューブ入り絵の具が発明され太陽の下で描けるようになった。目に見えるものは光の反射によるというのであれば、その光をこそ描いてみよう。それが始まりである。

モネは「印象・日の出」と題する画を発表したが、先輩の画家たちから未完成作品と笑われた。それで「印象派」と呼ばれた。今では誉(ほ)め言葉のようだが、実は蔑称。そこがまた妙味である。

同美術館の展覧会は6月23日まで。その後、東京富士美術館、あべのハルカス美術館へと巡回する。

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