
太平洋に面する千葉県の外房を車で南下する機会があった。大洋の視界の果てに続く丸みを帯びた水平線に驚き、また荒々しい波が岩を砕く豪快な光景を堪能した。
途中、道路脇に瀟洒(しょうしゃ)なホテルが建つ地域があり、一方、古びた木造家屋が立ち並びその中に洋品店や食堂、八百屋など小売店が交じる人々の生活の場が広がっている所もあった。平成・令和の建造物と昭和レトロの街並みが断続的に現れた。
「人口戦略会議」発表の報告書によると、千葉県54市町村のうち約4割の22市町が将来、人口減で「消滅可能性あり」。その多くは外房地域に位置するという。先に通った町の少なからずが、その対象ではないかと思ったりした。
昭和45年に制定された過疎地域対策緊急措置法では、人口が中長期的に減少し、財政基盤が脆弱(ぜいじゃく)と判断された過疎市町村に対し国などから各種の支援策が講じられた。しかし、この50年のうちに人口流出抑制で目に見えるほどの効果があった所は非常に少ない。
過疎条件を数値的に規定し予算を講じるというやり方は、必ずしも的を射ていなかったのではないか。外房地域で言えば、観光業を主体に大手企業がその設計図を描き街づくりに貢献したのだろう。だが断定はできないが、それでも効果は限定された。
今後はむしろ、県であれば県という行政単位で、有機的な街づくりという全体的な視点を大事にし、各市町村の役割をある程度明確にした上での過疎対策が必要だ。