具だくさんみそ汁は母の味

数年前に実母と義母を亡くし、母の日が近づいてもプレゼントなどを考える対象がなくなった。最初の2、3年は不思議な感覚だったが、だんだん通常になってきた。

とはいえ、母の日や母の誕生日、命日はもちろん、日常のささいなことがきっかけで、母を思い起こすことがある。

最近、早朝に妻が出掛けた後、朝食を取ろうと思うと、無性にみそ汁が食べたくなった。50代の頃までしていたように、久しぶりに作ってみた。

小学校の家庭科で習った「ネギと豆腐」か「ジャガイモと玉ねぎ」をベースとして、粉末カツオだしと小松菜やブナシメジ・シイタケ、ワカメ・昆布、白菜など、手元にある野菜をどっさり入れて沸騰させ、そこに卵を入れて半熟にしてから火を止めて、赤みそ(できれば、こうじみそ)を急いで溶かし、ひと煮立ちさせて、おわんにいっぱい盛り付ける。

実は、この具だくさんのみそ汁は母の味だ。中高校時代は毎朝、食卓に着くとこの大盛みそ汁とご飯がドンと置かれており、それをお代わりして2杯ずつ食べていた。実感としては食べさせられていた。2杯ずつ食べないと、どこか悪いのかと母が心配するので、定期試験の日、超短睡眠でやっと起きた時も詰め込んだ。

当時は午前中にしばしば居眠りしたが、朝食をしっかり取ると体が目覚め、午前中から身体が活発に動くらしい。

実家が商家で早朝から忙しい時もあったが、大盛みそ汁とご飯の目覚めの洗礼は毎日続いた。今考えると、大変ありがたいことだった。

ただ還暦後は、どんなにお代わりしたくても、妻から「1食ご飯1杯」の禁令が出ているので、それに従っている。こちらも筆者の体を心配してのことだから、ありがたい限りだ。

(武)

spot_img
Google Translate »