【上昇気流】(2024年5月29日)

薔薇

先週の満月の余韻に今も浸っている。昇り始めは黄金色、深夜には白く輝き街を煌々と照らし出した。夜明け前、夕日のごとく赤く染まって西の山に沈んだ。

5月の満月は花々が咲き誇る季節から「フラワームーン」と呼ばれるが、月自身が花のごとく変化した。ならば、次はじっくり花の観賞を。

そんな思いを見透かされたか、ご近所さんから自宅の庭で育てておられる薔薇(バラ)の花を頂いた。赤、白、ピンク、黄、紫と色とりどり。出窓に飾って、その輝きを見、香りを楽しんでいる。

薔薇の花、チューリップの花、ツツジの花、藤の花ならば世にあるが、「花」だけの単なる花は存在しない。植物学的には「種子植物の生殖器官」が普遍的な特徴だが、その形や色合い、咲く季節など現れ方が個別的なのである。だからこそ輝き愛(め)でられる。

国にも個性があるのではないか。戦後、「歴代内閣の経済指南番」と呼ばれた木内信胤(きうちのぶたね)氏(元世界経済調査会理事長)は昭和30年代からずっと国の在り様を考え続け、日本も世界の国々も、全て「国の個性」に生きてこそ、よき世界が実現するとの確信に至った(『國の個性』プレジデント社、昭和61年刊)。

「このことに気が付いて私はいま、唯独り、涙のこぼれるような感動にひたっている」と同書序文にある。それから40年近く経(た)ち、「国の個性」を語る人はさほどいない。だから国の輝きが失せているのではないか。薔薇の花を見つつ、ふと思った。

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