
「優勝する姿を石川の人に見せられた。本当にうれしい」――。大相撲夏場所の千秋楽、小結大の里は優勝インタビューでこう語った。石川県出身力士では、元大関の出島以来25年ぶり。能登半島地震で被災した人たちに強い勇気を与える優勝だ。
2月には同じ石川県出身の遠藤や輝と共に七尾市や穴水町を訪問し、被災者を激励した。出身地の津幡町は金沢市に近いが、石川県では能登地方と加賀地方のちょうど境にある。富山へ通じる分岐点でもあり、加賀、能登、越中の交通の要衝。
幕下10枚目格の付け出しでの初土俵から7場所でのスピード優勝に本人も驚く。幕下付け出しデビューの優勝では、同郷の元横綱輪島の15場所を大幅に更新するものだ。
石川県の相撲ファンにとって、郷土出身力士では輪島の存在がいまも大きいものがある。出島や現役の遠藤らが本名を四股名にしたのも、輪島にあやかったものという話があるくらいだ。その輪島の記録を同じ石川県出身力士が塗り替えたのだから、こんなうれしいことはない。
たまたま勢いで優勝したというのではない。春場所も最後まで優勝争いを演じた。恵まれた体躯と馬力を生かし、今回は2回目の技能賞も獲得した。
23歳という若さを考えると、将来どんなに強くなるのか、期待は大きく膨らむ。千秋楽の前日、二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)から「優勝しても喜ぶな」と言われたのも「より高い目標を持て」ということだろう。