憲法前文では、「日本国民は、(中略)平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは(中略)国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」とある。ロシアのウクライナへの侵略を見ても、この部分は明らかに空論である。換言すれば「空想的平和主義」の宣言である。
しかも同じ前文で、「われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない(中略)、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」と続く。
この部分は俗にいう「一国平和主義」の明白な否定である。また、現在の国際情勢に照らせば、すぐ前に記述されている「空想的平和主義」の否定でもある。
現行憲法については、近年、多くの問題点が指摘されているが、この前文の一部を取り上げても改正が必要なことは明らかである。
読売新聞社が2024年3月~4月に行った憲法に関する全国世論調査(郵送方式)では、憲法を「改正する方がよい」は63%(前回2023年 61%、前々回2022年60%)と、3年連続で6割台の高い水準となるなど、国民の多くが改正の必要性を認識している。
しかしながら憲法施行77年を迎えた今月3日の主要各社の社説を見ると、産経、読売、日経などが改憲に向け国会審議の加速を求めたのに対し、朝日、毎日、東京などの護憲派メディアの論調は空想的平和主義から一歩も出ていない。
また国会の憲法改正の議論も遅々として進んでいない。国会議員の3分の2以上の賛成で改正の発議をするという、極めて改正のハードルが高い硬性憲法であることが、その理由の一つであるが、緩慢な国会手続きも大きな要因である。
改憲に積極的な意見を持つ自民・公明・維新・国民の4会派の議員数の合計は衆参両議院で既に3分の2を超えているが、改憲に否定的な立憲民主党など護憲派の抵抗で衆参両議院共に憲法審査会の開催は大幅に遅れて、実質審議も堂々巡りを重ねている。
少数意見の尊重は民主主義の基本原則ではあるが、意見表明を拒否して審議を拒むことは少数意見開陳とは言えない。
今国会で改正の発議をし、国民に最終決断を求めるなら、このような会派を除外して議論を進めることを決断すべき時期である。(遊楽人)