翼よ、あれがパリの「火」だ――。7月に開幕するパリ五輪の聖火が先週、南フランスの港町マルセイユに到着。空軍機がフランス国旗になぞらえた3色のカラースモークを青空に描いて歓迎した。
それを報じる新聞に「翼よ」の見出しがあった。1927年に大西洋単独無着陸飛行を初めて成功させたリンドバーグの「パリの灯」を聖火の「火」と洒落(しゃれ)ていた。それで飛行機に思いを馳(は)せた。
リンドバーグが操縦したのは「スピリット・オブ・セントルイス」号。1人乗りプロペラ機である。その10年後の37年に日本の2人乗りプロペラ機が初の欧亜横断(東京─ロンドン)飛行を成功させ、世界を驚かせた。
朝日新聞社が陸軍から払い下げを受けた九七式司令部偵察機で、その名を「神風」といった。翼に旭日(きょくじつ)旗そっくりの朝日社旗が鮮やかに描かれている(山崎明夫編著『朝日新聞社訪欧機 神風 東京─ロンドン間国際記録飛行の全貌』三樹書房)。
この快挙は日本の航空技術の高さを世界に示す絶好の機会となり、国中が「やったぞ、朝日!」と沸いた。これで部数拡大を図り、大朝日の礎を築いたのである。
NHKが今年4月から成功談のドキュメンタリー番組「新プロジェクトX~挑戦者たち~」をスタートさせたが、戦前編であれば間違いなく登場する偉業である。朝日新聞は何かにつけて戦前の日本を否定するが、これは大いに誇っていい。自虐史観からの離脱をお勧めしたい。