人のいない低山を探して

三方分山ハイキングコースの紅葉

今年は円安効果で外国人観光客が増え、5月の大型連休の観光地ではオーバーツーリズム(観光公害)が深刻化した。桜の時期、特に箱根や富士五湖周辺の観光地は富士山を間近で見たい外国人観光客でにぎわった。

富士河口湖町の精進湖の北にある三方分山は、日本人でもあまり知らないマイナーな山だが、連休前の平日に登った時、何人もの外国人と出会った。

最初に出会った2人の若い男性はスイスからの旅行者だった。1カ月半の長期休暇を取って、日本旅行に来ていた。「1カ月半もうらやましい限りだ」と言ったら、「有給休暇がたまると、会社からそろそろ休暇を取るようにと通知が送られてくる」と話していた。

大型連休後半、5月4日の「みどりの日」に神奈川県の丹沢山と塔ノ岳を9時間かけて縦走した。ダム湖「宮ケ瀬湖」方面から登る丹沢山最短ルートは車でしか登山口に行けないので、静かな山を楽しめる。その日、登り途中に出会った人は下山者2人だけだった。

丹沢山から塔ノ岳に向かう縦走路もそれほどではなかった。ところが、塔ノ岳に着くと山頂は高尾山並みに混雑していた。

その中でひときわ目立っていたのが、国旗を掲げ山頂標識の前で歓声を上げて記念撮影をするインドネシアの若者グループだった。他にも中国語を話す声も聞こえてきた。

夏山シーズンになると、軽装で富士登山をする外国人のマナーが問題となるが、近場で日帰り登山ができる塔ノ岳にも外国人登山者が訪れるようになった。

『日本百名山』を書いた深田久弥は、静かな人のいない山を好んで登った。都会人がよく山に行くのはできるだけ世俗から距離を置きたいからである。

近年、丹沢山塊はオーバーユース(過剰利用)で侵食が進み、行くたびに木道の階段があちこちに増えている。人のいない静かな登山はますます、しにくくなっている。

(光)

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