トップコラム【政界一喝】選挙対策に余念なき季節

【政界一喝】選挙対策に余念なき季節

4月28日投開票の衆院3補欠選挙では立憲民主党が3勝し、自民党は二つの不戦敗を含め全敗であった。昨年末以来の政治資金不記載問題の党内処分で4月上旬、岸田文雄首相は自身の処分を見送り、それについては「国民と党員に判断してもらう」と述べた。自民は補選で唯一候補者を立てた島根1区で敗戦、また政権与党ながら長崎3区、東京15区では候補者擁立すらできなかった。つまりこれら3選挙区で保有全議席を失うという国民の審判を受けたわけだ。だが岸田氏から退陣などの、責任表明は一切なかった。

ところで、このたびの3補選以降、政界は文字通り常在戦場モードとなった。今月末にはリニア政策を巡って物議を醸し続けた川勝平太前知事の辞職を受けた静岡県知事選、7月には東京都知事選、9月には自民党総裁選があり、また10月には衆院解散総選挙の可能性が高い。岸田首相とすれば、専権事項としての解散権行使のタイミングを6月の国会会期末にするかどうするか神経をすり減らす毎日のはずだ。4、5月の外遊、6月以降実施の所得税の定額減税、あるいは拉致問題解決のための訪朝など、あらゆる機会を政権支持率向上に結び付けようとする。すでに国民不支持が長期化した岸田氏は、多少なりとも反転上昇を伴う実績評価なくして、党総裁選にも出馬できず幕を閉じる運命を待つだけだ。

さて5月3日憲法記念日を巡っては戦後79年目の今日、わが国を取り巻く安全保障環境の変化、また能登半島地震対応でも活躍した自衛隊の位置付けなど、国民が改憲論議に向き合い「憲法と私」のテーマで意識を高める機会となったのは良かった。昨今のNHK調査でも改憲を必要と考える国民の割合が、昨年より1ポイント増え36%となっている。

だが同日、岸田首相が改憲派集会にメッセージを寄せたことなどは、大いに選挙対策の側面を加味して見なければならない。自民党総裁としての岸田氏の典型的失政は、2021年秋の総裁選で安倍元首相擁する最大派閥・清和会から多数の支持を得て総裁就任を果たしたにもかかわらず、安倍氏暗殺後、元来公約にもなかったLGBT理解増進法を可決させるなど、保守有権者の落胆を招く政策を断行した点である。6月までの国会会期中に、改憲発議を行うスケジュールをこれまで岸田氏が明示してきた実績はない。選挙対策として離反した保守層への「やってる感」の創出以上に、過分な指導力を期待することはできまい。

来る解散総選挙で、いずれ現有からの議席減が避けられぬ見通しの自民党は、政権維持のために維新や国民民主との連立への模索も始めた。国会議員に月額100万円支給される「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)の使途公開を義務付ける法改正へと、岸田氏はこれを主張してきた維新へ歩み寄る構えだ。

岸田政権は保身と延命、また衆院各議員は自己の議席維持という至上命題や近づく選挙対策に余念がない季節。国民には、日本国全体が誤った方向に漂流しないか、注意喚起が求められる。自民党には9月の総裁選を通じて、政策論争とともに、有志議員らによって体質的にも生まれ変わる準備こそ不可欠だ。(駿馬)

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