トップコラム【上昇気流】(2024年5月8日)

【上昇気流】(2024年5月8日)

中曽根康弘元首相(Wikipediaより)

「我ら日本国民は、アジアの東、太平洋の波洗う美しい北東アジアの島々に歴代相(あい)承(う)け……」――。中曽根康弘元首相が2005年1月に発表した「世界平和研究所 憲法改正試案」の前文の書き出しだ。昨今の改憲論議で憲法の前文が蚊帳の外なので、つい思い浮かべた。

中曽根氏は戦後体制を「蒸留水」に譬(たと)えた。自由や民主主義を唱えても、その土地の薫り、国柄が全く感じられないからだ。その象徴が憲法前文。マッカーサー草案の英文直訳で国柄が削り落とされている。だから試案で何よりも力を入れたのが前文だった。

05年に自民党の新憲法起草委員会の前文小委員長に就くと、党の「ご意見番」だった後藤田正晴元副総理から「憲法前文には、聖徳太子十七条憲法の『和をもって貴しとなす』をぜひとも入れてほしい」と頼まれた。その直後に後藤田氏は亡くなった。

この“遺言”に応えて素案に「和」を織り込んだが、時の小泉純一郎首相(党総裁)が全く別物の「無機質な政党官僚の作文」(中曽根氏)にすり替えてしまった(岩見隆夫氏「最長老・中曽根の『怒り』」毎日新聞05年11月19日付)。

麗澤大学准教授のジェイソン・モーガン氏が小紙6日付で日本人自身による「親日」の憲法づくりを提唱していた。これは中曽根氏の考えと相通じる。

冒頭の試案前文は「天皇を国民統合の象徴として戴き、独自の文化と固有の民族生活を形成し発展してきた」と続いている。改憲の本筋を銘記したい。

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