自民党の裏金問題で内政的には国民の厳しい批判に晒(さら)されている岸田政権が外交的には着実に成果を挙げている。4月の訪米で日米首脳は、日米関係を「グローバル・パートナーシップ」と位置付け、自衛隊と米軍の「指揮・統制」関係の強化方針を明らかにした。
日本は陸海空自衛隊の部隊を一元的に指揮する常設の「統合作戦司令部」を来年3月までに新設する一方で、米側は在日米軍司令部に作戦指揮機能を新たに付与し司令官を大将に格上げすると伝えられる。日米の連携は飛躍的に強化され、日米安保の実効性が更に高まると期待される。
現在の在日米軍司令部には作戦行動に関する指揮権はなく、自衛隊と米軍の共同作戦に関わる調整は統合幕僚監部とハワイにあるインド太平洋軍司令部との間で行われている。
ハワイ・東京間の調整は、物理的な距離と時差があって平時でも円滑さに難点があり、有事の日米間の迅速・緊密な連係を問題視する向きがある。米軍の作戦司令部が日本に設置されれば、日米の「指揮・統制」関係が一層緊密になり、抑止力を高めることができる。
またぞろ批判勢力は、「自衛隊が圧倒的な戦闘力や情報力を持つ米軍の指揮下に組み込まれる」とか、「米国の戦争に日本が巻き込まれる日米軍事同盟の歴史的大転換だ」などの批判が出ているが、日米安保条約では「締約国は自国の憲法上の規定及び手続に従って行動する」、日米防衛協力のための指針では「自衛隊及び米軍は各々の指揮系統を通じて行動する」と厳しく規定されており、自衛隊が米軍の指揮下に入る心配はない。むしろ心配なのは「抑止が破綻した場合はどうなる? 日米安保体制は本当に機能するであろうか?」である。
抑止が敗れて戦争になれば軍事同盟の国は当然に“ファイト・トゥゲザー”となる。しかし日本の憲法上の制約から、連合軍ではない日米同盟は自動的に共同作戦の展開とはならない。加えて、日米安保条約第5条では各締約国は、「自国の憲法上の規定及び手続に従って」共通の危険に対処、行動するとある。米国での決定権は連邦議会にあり、連邦議会で承認されなければ日米安保は発動されないのである。
日本周辺の脅威、中・露・朝は核保有国である。日本が攻撃された場合、米国は核保有国との全面戦争のリスクを冒して、日本のために戦ってくれるであろうか。緒戦は日本が独力対処せざるを得ないが、米国は直ちに作戦加入をせず背後での情報提供、武器弾薬支援に留(とど)まり続けるのではないかと危惧される。ウクライナを見てそう思われる。
米国の軍事力は、わが国の防衛はもとより地域の平和と安定に不可欠である。だからこそ、常に日米の国益を唱え、戦略的価値を共有して、米国の防衛関与と軍事プレゼンスを後退させてはならない。いわばわが国が米国を巻き込むのであって、離してはならないのである。抑止が破れた場合に、日米同盟の軍事的非合理性を補っていかにして時間的にサイズ的にフルスペックでの米国の関与、作戦加入を引き出すかが鍵である。
その意味で今回の「指揮・統制」関係の強化方針は有事を睨(にら)んだ抑止力と対処力の強靭(きょうじん)化に直結し、日米安保の実効性を高める外交的ヒットであると評価したい。(遠望子)





