
「梅栗植えてハワイに行こう」――。60年以上も前にこんなキャッチフレーズで地域振興を図った村があった。大分県大山村(後に町。2005年、日田市に編入合併)である。当時、国はコメ増産を奨励していたが、コメ作りに不利な典型的な山村だった。
当時の村長、矢幡治美さんは「底なしの貧困」からどうすれば脱せるのか思い悩んだ。そんな矢幡さんを導いたのは、金光教日田教会の堀尾保治教会長の言葉だったという。
「自分の家族を大切に思う人は多いが、それを超えて周囲の人びと、村ぜんたいの人びとの幸福を願うのが真の信心だ」。それをきっかけに山地を逆手にとってコメから梅や栗に転作する「ウメ・クリ運動」を起こし、見事に成功させた。
民間の有識者グループ「人口戦略会議」が若年女性人口の減少率を基に全国744の「消滅可能性自治体」を公表し、世間を驚かせた。それでウメ・クリ運動の大山が気になってその自治体一覧表を見ると、日田市は14年調査では「消滅」とされていたが、今回はそこから脱していた。どうやらウメ・クリ運動の精神は健在のようだ。
矢幡さんの逸話は大分大山町農業協同組合のホームページに詳しい。ネットを開くと、梅花の写真に「種をまき 夢を追う」との矢幡さんの揮毫(きごう)が目に入る。計画は「はじめに愛があった」ともある。
自治体生き残りへの方策がさまざまに論じられているが、大山の挑戦は参考になるのではなかろうか。






