
先日、地方に住む看護師の友人がソウルに遊びに来たところ、急に喉と胃が痛むと言うので、彼に付き添ってクリニックへ行った。韓国も日本のようにクリニックが幾つも入る雑居ビルがたくさんある。ビル内には薬局もあって便利だ。
耳鼻咽喉科で受診したら扁桃(へんとう)腺が腫れていると言われ、喉と胃痛の薬を処方してもらった。ところが、薬を飲んだら逆に胃痛が激しくなり、翌日、内科で受診し直した。「ストレス性の風邪ですね」と言われ、別の薬をもらった。前日に受診した耳鼻咽喉科にも行き、弱い胃薬に替えてもらった。
さすが看護師だけあって状況判断が速いなと感心したが、一方で驚いたのは医師たちの患者への応対だった。どこのクリニックも受診時間は患者1人当たり1分にも満たないくらい短い。友人に聞けば「韓国ではこんなもの」。患者には顔を向けず、カルテを打ち込むパソコンの画面だけ見て診察を終える医師も多いそうだ。強過ぎる胃薬を処方した耳鼻咽喉科の医師は、薬の選択を誤ったことに対する謝罪の言葉もなかったという。
高齢化に伴う医師不足に備え、政府が大学医学部の定員枠を拡大する方針を発表したところ、全国の医師たちが反対して医療現場を離脱するなど混乱が続いている。「自分の給料が減る」「学力が低い人と肩を並べたくない」という反対の理由の背景には、世界一高給取りとも言われる韓国の医師の傲慢(ごうまん)とも言えるプライドの高さがあるのではないか。クリニックの医師たちの患者に対する素っ気ない態度を見て、そう思わずにはいられなかった。(U)