東京、名古屋、大阪の三大都市圏を結ぶリニア中央新幹線の敷設工事は、工期を延ばすための恣意(しい)的な反対もあったが継続している。最先端の技術開発やその海外輸出の多くは国土開発に絡んで行われ、リニアモーターカー実用化の意義の一つもそこにある。
明治以来わが国の交通体系は中央都市の恩恵を広く伝播(でんぱ)し、また各地の生産物を中央にスムーズに運び消費する役目を果たした。その相互作用が人の移動や経済発展を促してきた。
一方、去る2月、大分県プロジェクトチームは九州と四国を海底トンネルや架橋で結ぶ豊予海峡ルートや東九州新幹線敷設について「日本全体に大きな効果が期待できる」として整備を進めるべきだという報告書をまとめ公表した。
大分市のホームページの中で、全日本建設技術協会会長・大石久和氏は地方の交通機関の現状を「北海道にしても、四国にしても、在来線のレールを剥がしていて、北海道のネットワークは、確か大正時代のネットワークぐらいに下がってきている」と嘆く。
過疎化、人口減少による地方交通機関の衰退の影響は深刻で「(地方拠点の強化と本来)地域が持っているポテンシャルを引き出す」ことが必須だと。
その上で、大石氏は「全体として『日本が新しい規格のネットワークで結ばれている』、そういう国に変えていく必要がある」「人や物の行き来がなくなったから、交通手段を縮小する(では駄目)」と強調する。正論だ。