【羅針盤】座談会 ウクライナ戦争と日本の教訓(下)「日米」軸に同志国を増やす戦略強化を 歴史の実相を伝える教育が不可欠

自助努力しない国に救いの手出す国なし

木原稔防衛大臣と記念撮影する護衛艦「みくま」の乗員たち (2023年10月、長崎県の佐世保地方総監部)

――ウクライナの状況を見るまでもなく、日本は日米同盟を軸にさらに重層的な他国との安保連携が必要なのではないか。

遠望子 われわれは、国際世論がウクライナ側に付いていると思っているが、ロシアの方は中国、北朝鮮だけでなく、グローバルサウスなどに積極的に働き掛けており、絶対的な人口でいうと彼らの方に味方が多い。日本の防衛で、台湾有事や朝鮮半島有事に備えては、今から同志国を増やすと同時に、相手勢力に対しては結び付きの一つ一つに分断のくさびを打ち込むような外交や知略を発揮する必要がある。

呑舟 まずは自国生産設備をしっかり保有することが重要だ。弾薬の緊急調達や緊急生産をする。そのため一時は生産ラインを残していた。だが今はない。だから他国からの要請に対しては、相手国は戦争のために欲しいと言っているのではなく、自国で生産能力がないから自国の領土を守るため万一のときのために欲しいと言っている。これには対応すべきだ。

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――トランプ氏が米大統領に返り咲いた場合、日米関係はどうなるか。トランプ氏は大統領時代、日米同盟の片務性に不満を持っていたが、「もしトラ」の場合をどう展望するか。

遊楽人 日本のメディアは「もしトラ」になれば大変だと言うが、そう心配する必要はない。唯一気掛かりなのは、先回は安倍晋三という強力なリーダーがいたが、彼に代わるリーダーがいるのかということだ。トランプ氏は商売人でもあるから言うことは極端だが、いざというときは米国の国益に反することはしないだろう。

遠望子 ただ米国の国力というか、軍事力は落ちてきている。日本の防衛努力に対する圧力はバイデン大統領より強くなると思う。それにトランプ氏の母体は共和党だから、国益に反するようなことにはならないが、USスチールの問題など、突然変異(の方針)を起こす可能性がありスタンドプレーには注意は必要だろう。

呑舟 トランプ氏が大統領に就任した場合、大変だと騒ぐのではなく、政治家である以上、それをどう利用するか注力すべきだ。自分の防衛は自分でやれと言われたら、「では基地を返してもらえますか」と、国同士だから対等のことを言えばいい。防衛しているのだから、もっと負担せよと言うのなら、「核シェアはどうか」と応ずるのもいい。北朝鮮から撃たれても、アメリカ本土からは(報復として)撃ち返さないだろう。

ピンチをチャンスにどう転換するか、そこは首相の腹次第だ。国民が半分、反対したとしても、いやこれしかありませんと決断すべき時は決断すべきだ。民意、民意と言って逃げるべきではない。

――日本の“羅針盤”を定めていく中で、何が根本的に求められているか。

呑舟 日本弱体化を図ったGHQ(連合国軍総司令部)の下、われわれの前の世代まで全部墨で消されて、30項目にわたり、発言や記述が規制された。それをいまだに学校教育の中で守っている。マスメディアの報道にも問題がある。東京裁判でインド代表のパール判事は「日本無罪論」を主張したが、それだけでなく当時のフランス代表もオランダ代表もおかしいと言っている。また、GHQのトップだったマッカーサー司令官も米国に帰った時、あれは日本の自衛戦争だったと回顧した。そういう歴史を日本はもっと前面に出す必要がある。

遠望子 高齢世代や親の世代は私を含め、歴史の実相はこうだよという教育を全くやってこなかった。子供たちも学校で明治維新以降の近代史を教わっていない。それを看過してきた。そこがドイツ人と日本人の違いだ。ドイツは日本同様に撤廃、変更を迫られたが、悪かったのはヒトラーとナチスであって教育には全く問題ないと貫き通した。

呑舟 日本本土の米軍基地は占領されたままで、一度も日本に返っていない。横須賀や岩国、佐世保、沖縄、三沢もそうだ。現状の形で再契約して改めて基地を貸す形とすべきだ。ドイツもイタリアもちゃんと返還されている。

遊望子 三沢基地は米軍の占有施設となっている。

呑舟 占有地と言われたらパスポートがないと入れない。横須賀でも岸壁を使えない。国連軍の旗を掲げた外国艦が来て横須賀基地に入れば日本は傍観視するだけだ。そのまま横須賀基地に入れる。

遊望子 三沢基地の3%分の土地を自衛隊が使わせてもらっているという状態だ。航空自衛隊がいる横田基地もそうなっている。

遠望子 すべての問題は憲法に帰着する。抑止力を高めるためには、まずは憲法論議を始めることだ。いきなり憲法改正できなくても議論することが大事だ。

遊楽人 インドでも大東亜戦争後に戦争犯罪の裁判があった。しかし、インド各地で反対する国民運動が起こって最終的には有罪にはなったが、即日執行停止、釈放となった。それに至るまでインド国民の反対運動はすさまじかった。東京裁判でも世界各国で話題になって論争が起こったが、日本ではそういう論争が全く起こっていないのは嘆かわしい。

呑舟 一部、出てはいた。東京裁判での死刑判決の際、激しい反対が国民からも出ていた。あの方々を靖国に入れることを願った署名が37万人残っている。

遊楽人 日本の国が侵略されたら戦いますかとのアンケートで、日本は世界最低の13・2%だった。結局、「天は自ら助くる者を助く」ではないが、自ら助けようとしない国を誰が助けてくれるのか。これが基本原則だ。例えば日本には歴史博物館がないが、これをきちんとつくって近代史で当時の日本が置かれた立場、その時、どういう決心をしたのかを啓蒙(けいもう)していく努力が必要だ。

遠望子 修学旅行で中学生や高校生が東京に来るが、靖国神社の遊就館で勉強してもらったらよい。

呑舟 ある地方の墓地では土葬ができなくなった納骨場がある。その中でもそのまま残っているのが戦死墓だ。国が出した予算で戦死者の遺族がつくったものだ。そこには階級と名前、それに戦死した日が刻まれているが、それだけは全部残っている。子供と一緒に帰った時など、これが何で残っているかを伝えている。今の靖国神社に総理が何で来ないのか。今日の日本があるのは、あなた方がいてくれたからですという気持ちであり、防大生が靖国に参るのは何も宗教絡みで来ているわけではない。この問題は憲法違反ではないと明確にされている。

――ありがとうございました。

(司会=黒木正博・本社顧問論説担当)

【メモ】「ウクライナ」の教訓で3氏が異口同音に強調されたのは、自分の国は自らで守るという原点だ。その上で日米同盟を柱に、協力関係にある同志国をどう構築していくか。これは安倍政権時からの流れと言えるが、問題は、先の「原点」をいかにして教育し啓蒙するかが不可欠だろう。

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