【上昇気流】(2024年4月12日)

七尾市石崎町の災害廃棄物仮置き場に次々に災害ごみを積んだ車が入っていく=2月27日、藤橋進撮影

能登半島地震で大きな被害が出た石川県七尾市。中でも、昔ながらの古い商店が並ぶ一本杉通りは被害が激しい。全国的に知られた和ろうそく店の登録文化財の建物が倒壊するなど、雰囲気のある街並みは大きく破損された。

しかし、そんな様変わりした街にも春の使者はやって来た。今年も通りを燕(ツバメ)が飛び交う季節となった。人々の生活がどんなに激変しても、自然は変わらぬ営みを続けている。

その一本杉通りの外れに古い米穀店がある。お米マイスターの資格を持つ80歳を超える当主は5代目。ここも建物が被害を受けたが、それでも最近店を再開した。

間口は6間ほどある大きな店で、訪ねてみると入り口のガラス戸が3枚分大きく開かれている。毎年、今の季節になると店先の天井に燕が巣を作る。その燕の出入りのために玄関を広く開けているのだ。

通りから中を覗(のぞ)いていると、燕がさかんに店を出たり入ったりしている。まさに巣作りの真っ最中という感じである。燕の元気に飛ぶさまを見、当主の優しい心遣い、心意気を思うと「大丈夫だ。この町は必ず復興する」という気持ちになってきた。

石川県では1972年以来、県内の小学6年生が燕の成鳥や巣の数などを調査している。環境に関心を持ち自然を愛する心を育む教育の一環である。地震で毎年巣を作っていた家が壊れるなど、燕の営巣への影響は免れないだろう。もっとも能登地方では調査自体、今年は難しいかもしれない。

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