【羅針盤】ウクライナの継戦能力に学ぶ

ロシアが「特別軍事作戦」と称して、ウクライナへの軍事侵攻を開始して3年目に入った。この戦争は、ロシアの見積もりの甘さもあるが、短期間でウクライナを併合するとのプーチン大統領の当初の目論見(もくろみ)は外れた。今後、国連による打開策や停戦への動きも見えず、ウクライナは守勢戦術へ転換したのか、戦争は長期化の様相を呈してきた。

大国ロシアに対する、ウクライナのこの継戦能力は、何から生まれているのか考えてみたい。一番は、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の指揮能力と、それを支えている政治力にある。次は、2014年3月のロシアによるクリミア半島併合が、ハイブリッド戦により短期日に行われ、これに対してウクライナは、この反省に基づき防衛を強化し、ハイブリッド戦の訓練を重ねて、非常事態を想定し備えてきた。そしてもう一つは、農業大国として自給食の十分な備蓄量を保持していたことを挙げたい。

この3点について、わが国として学ぶべきことは何か。大東亜戦争で敗北した日本は、「東京裁判」によって戦争責任を問われ、連合国軍総司令部(GHQ)に、自虐史観を押し付けられ、それを戦後教育やメディアの偏向報道で、政治体制も戦後レジームから脱却できないでいる。

大変革と言われる世界の動きの中で、日本はいまだかつてない厳しい脅威の中にあっても「平和憲法第9条のおかげで日本は平和」と永田町も「平和ボケ」している。憲法改正しなければ、現行法では、国民も国も護(まも)ることはできない。国と国民を護るより、憲法を護ることの方が重要かと問いたい。

まずは「民意、民意」と逃げずに、政治が決める政治家の立ち位置をウクライナに学んでほしい。そして憲法を改正して、防衛力を強化し、国家意思として動くという日本の抑止力を周囲の国に与えることが普通の国としての一歩である。

3点目の備蓄は、3カ月が過ぎた能登半島地震の現実をウクライナ戦争に重ねると分かりやすい。わが国のカロリーベースの食糧自給率は、何と約38%と先進国では最低である。

主食の米の備蓄は100万トンで、カロリーベースにすると、1人当たり約14日分しかないと。瑞穂の国も今や米食から肉・油類に食生活が変化し、食糧の6割以上が輸入されている。ウクライナもロシアも、食糧輸出国である。日本は、エネルギーも食糧も輸入国である。

海洋(シーレーン)の安全確保は、備蓄の前に日本の生命線と知るべきであろう。

(呑舟)

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